解説1 世界測地系と日本測地系の違い

解説1 世界測地系と日本測地系の違い


ここでは、測地系について説明し、世界測地系と日本測地系の違いが理解できるように解説します。



1.1 準拠楕円体 --- 実物大の地球儀 ---


    • 〇 地球儀は地球の模型ですが、実際の地表面とは違って表面が滑らかな球面になっています。滑らかな面なので表面に地表の様子をわかり易く描くことができます。また、地球儀の表面には滑らかな曲線で経線と緯線が描かれていて、例えば世界の主要な都市の経度と緯度を簡単に読み取ることができます。

    • 〇 このように地球儀は地表に関する情報を整理するのに大変便利です。そこで、頭の中で、実際の地球とほぼ同じ大きさで、表面が滑らかな巨大な地球儀を想像して見てください。巨大地球儀の表面となる曲面としては、実際の地表の凸凹を均した面とほぼ一致して、かつできるだけ簡単な数式で表すことができるものがあれば、計算が容易になり取り扱いが便利です。

    • 〇 そのような巨大地球儀の候補は、過去、それぞれの時代の知見に基づいて、何種類も提案されてきました。球面は、そのような曲面の中では、最も簡単な数式であらわされます。しかし、いろいろな観測・測量により、球面より回転楕円体面が実際の地表面の凸凹を均した形により近いことがわかってきました。回転楕円体は、円を押しつぶした形の楕円を短軸の周りに回転したときにできる曲面です。ちなみに、巨大地球儀になる回転楕円体面は、球面に非常に近く、わずかに南北に押しつぶされた形をしています。



1.2 日本測地系 --- 明治新政府が採用した準拠楕円体に基づく経緯度の体系 ---


  • 〇 明治初期、新政府が全国をカバーする地形図の整備のために開始した測量では、準拠する回転楕円体として、ドイツにならってBessel楕円体が採用されました。その諸元は次の通りです。
  • ・ Bessel楕円体
    長半径(a)6,377,397.155 m
    扁平率(f)1 / 299.152813
    ちなみに、短半径(b)6,356,078.963 m になります。
  • 〇 地表で行った測量の結果を用いて、三角点などの地点の位置を準拠楕円体面上の点に対応させていきます。準拠楕円体面上では経緯度が定義されますので、三角点の位置をきちんとした経度・緯度で表現できるようになる訳です。このようにして、地表の各点に与えられた経度・緯度の体系が、日本測地系です。

1.3 世界測地系 --- GPS時代の世界標準の準拠楕円体に基づく経緯度の体系 ---


  • 〇 しかし、明治の測量開始から百数十年が経過しました。現代の宇宙観測技術により実際の地表面に全体として最も近い回転楕円体面が明らかになってきました。この回転楕円体が、GRS80楕円体で、その諸元は次の通りです。
  • ・ GRS80楕円体
    長半径(a)6,378,137.000 m
    扁平率(f)1 / 298.257222101
    ちなみに、短半径(b)6,356,752.314 m になります。
  • 〇 現在広く日常生活にまで利用されるようになった全地球測位システムGPSが準拠している楕円体はWGS84楕円体と呼ばれていますが、この楕円体はGRS80楕円体と実用上同一なものです。これまで国によって別々の準拠楕円体が用いられてきましたが、GRS80楕円体に切り替える国が増えてきました。わが国でも、2002年に測量法が改正され、準拠楕円体をGRS80楕円体に変更することになりました。この新しい準拠楕円体に基づいて、地表の各地点に与えられる経度・緯度の体系が、世界測地系です。


1.4 新旧楕円体の形、大きさ及び中心位置の違い


  • 〇 新旧の準拠楕円体は、形と大きさが微妙に異なりますが、更に、楕円体の中心の位置も微妙にずれています。明治以来の測量結果と、同じ地点の近年の測量結果を比較することにより、ずれの大きさとしては次のような値を用いることとされました。
  • ・ 両楕円体のX軸、Y軸及びZ軸の方向は、それぞれについて平行である。
  • ・ 日本測地系の準拠楕円体に対する世界測地系の準拠楕円体のずれ
  •      ΔX= -146.507 m  ΔY= 507.337 m   ΔZ= 680.507 m
  •  (注)X軸は楕円体中心から赤道上の経度 0°の地点に向う方向、Y軸は楕円体中心から赤道上の東経 90°の地点に向う方向、Z軸は楕円体中心から北極に向う方向。
  •     座標軸の位置関係については、国土地理院の解説に図が掲載されていますので、ご覧ください。


1.5 世界測地系と日本測地系の経緯度数値の違い(その1) --- 準拠楕円体の違いの影響 ---


〇 世界測地系の経緯度の数値は日本測地系の数値とは十数秒程度の違いがありますが、この違いの主要な部分は、新旧準拠楕円体の形、大きさの違いと中心位置のずれのために生じています。説明の便宜のため、これを「一様成分」と呼ぶことにします。一様成分については、日本測地系に対して世界測地系の数値が、経度で-5秒~-18秒程度、緯度で+7秒~+17秒程度、文字通り全国にわたって一様な傾向で滑らかにに変化します。

  • ガイド1 一様成分(経度)の大きさを確認
  •    ここをクリックして、一様成分(経度)の変化図を表示します。
  • ガイド2 一様成分(緯度)の大きさを確認
  •    ここをクリックして、一様成分(緯度)の変化図を表示します。


1.6 世界測地系と日本測地系の経緯度数値の違い(その2) --- 測量・地殻変動の影響 ---


  • 〇 実は、世界測地系と日本測地系の経緯度の数値の違いの原因としては、この準拠楕円体の違いに起因する違い以外に、測量の誤差や地殻変動も考慮する必要があります。日本測地系の経緯度の数値は、現実に地表に設置されている膨大な数の三角点について、長期間にわたって実際に測量を実施した結果に基づいて決定されたものですので、当然、測量の誤差が含まれますし、更に、全国の測量の開始から終了までの数十年間の地殻変動も無視できません。地殻変動については、関東大震災のような大規模なものについては、再測量がなされ、経緯度の数値が修正されていますが、百数十年にわたる日本列島の恒常的な地殻変動については十分な措置は不可能でした。
  • 〇 前述の一様成分が全国にわたって一様な傾向で変化するのに対し、測量や地殻変動に起因する違い(説明の便宜のため、これを「地域成分」と呼ぶことにします)は地域ごとに変化の傾向が異なります。
  •   ただし、地域成分は、一様成分と比較すると、離島地域を除けば、非常に小さな値です。したがって、離島地域を除けば、精密な測量以外の用途では無視しても問題ありません。
  •   なお、地域成分は、日本測地系と世界測地系の両方の精密な測地測量の成果がそろわないと計算できません。このホームページでは、そのような成果がそろわない地域については、一様成分のみを考慮しています。

  • ガイド3 地域成分(経度)の大きさを確認 
  •    ここをクリックして、地域成分(経度)の変化図を表示します。

  • ガイド4 地域成分(緯度)の大きさを確認 
  •    ここをクリックして、地域成分(緯度)の変化図を表示します。


1.7 世界測地系と日本測地系の経緯度数値の違い(まとめ)


  • 〇 以上をまとめると、世界測地系と日本測地系の経緯度数値の違いについては、次のようなことがいえます。
  • ① 世界測地系と日本測地系の経緯度数値の主要な違いは、準拠楕円体の形、大きさの違いと中心位置のずれに起因する。
  • ② この違い(一様成分)は、日本測地系に対して世界測地系の数値が、
  •     経度で-5秒~-18秒程度、緯度で+7秒~+17秒程度、文字通り全国にわたって一様な傾向で変化する。
  • ③ これ以外に、測量・地殻変動に起因する違い(地域成分)があるが、離島地域を除けば、その大きさは非常に小さい。

  • 〇 この世界測地系と日本測地系の経緯度数値の違いを、以下で、具体的な地点について、地図で確認してください。


1.8 地図による世界測地系と日本測地系の経緯度数値の違いの確認


    • 〇 下の地図は、日本の領土が含まれる範囲を表示する「全体図」と、指定した地点付近を表示する「拡大図」で構成されています。

  • 〇 全体図(この地図の縮尺では世界測地系と日本測地系の経緯度数値の違いは現れません。)
  • ・ 全体図の上にある経緯度数値の表示ボックスは、経緯度を入力することができます。地図の赤いカーソルが入力された経緯度数値の地点を示すように移動します。
  • ・ 経緯度の数値は、「度単位」(数値を入力)と「度分秒単位」(セレクトメニュウから選択)のいずれでも入力できます。カーソルを表示ボックスに当ててクリックすると、地図との間に入力案内行が現れます。
  • 経緯度数値を指定してから入力案内行の「 適用 」をクリックしてください。地図の赤いカーソルの交点が指定された経緯度数値に対応する地点に移動します。中止する場合は、「 中止 」をクリックしてください。
  • ・ 度単位の入力の場合は、入力案内行に、地名から経緯度を検索する機能が用意されています。例えば、「札幌」と入力してをクリックすると、経緯度の入力ボックスに対応する経緯度数値がセットされます。そこで「 適用 」をクリックすると、地図の赤いカーソルの交点が札幌付近に移動します。
  • ・ 正確な経緯度数値を指定する必要が無い場合は、地図上で任意の地点をクリックしても、経緯度を指定できます。その場合、全体図の上と下の経緯度の表示も変わり、その地点の経緯度の数値が表示されます。
  • ・ 経緯度の数値は、「度分秒表示」と「度単位表示」の2種類を表示しています。

  • 〇 拡大図(この地図の縮尺では、世界測地系と日本測地系の経緯度数値の違いが現れます。)
  • ・ 全体図で指定された地点の付近を拡大して表示できます。
  • ただし、操作反応を速くするために、全体図で位置の指定を変更しても、そのままでは拡大図の表示は変わらないようにしています。
  • 表示を統一する場合は、全体図と拡大図の間にある操作案内行の、「 全体図に統一 」、「 拡大図(左)に統一 」または「 拡大図(右)に統一 」のいずれかをクリックしてください。
  • ・ 左側が世界測地系の(経緯度を表示している)地図で、右側が日本測地系の(経緯度を表示している)地図です。
  • ・ 拡大図では、「経緯線図」、「地理院地図」等、異なる種類の地図を選べます。(最初は、左右とも「地理院地図」)
  • ・「経緯線図」の場合は、経線・緯線と経緯度数値の表示のみですので左右の地図に違いが現れません。
  • ・「地理院地図」の場合は、左右で経緯度数値が同じでも、表している地点が異なっていることがわかります。

  • 〇 経緯度数値対比表  拡大図の下に、世界測地系と日本測地系の経緯度数値の違いを成分に分けて整理して表示しています。



全体図(測地系の違いが現れない縮尺) 拡大図


全体図(測地系の違いが現れない縮尺)    拡大図

東経 北緯
東経 北緯
東経 125.45 北緯 24.56
(注)図の表示が不完全な場合ここをクリック
東経 125.45 北緯 24.56
 

拡大図(測地系の違いが現れる縮尺)     全体図へ     (クリックすると操作法解説を表示)

経緯度数値対比表( 拡大図の中央地点における比較 )

地点 右側地図の中央地点
日本測地系で経緯度を指定)
項目 経度(E) 緯度(N) メッシュコード
世界測地系
(A)
135゚12'34"56 35゚12'34"56 4339-52-78 135゚12'34"56 35゚12'34"56 4339-52-78
日本測地系
(B)
135゚12'34"56 35゚12'34"56 4339-52-78 135゚12'34"56 35゚12'34"56 4339-52-78
差(A-B) (a+b) -10"00 13"00 注)ここは
一様成分

のみ考慮
成分
内訳
一様(a) -12"34 12"60
地域(b) 2"34 0"40


  • (注1)一様成分とは、両測地系の準拠楕円体の違いに起因する全国一様な傾向で変化する成分です。
  • (注2)地域成分とは、地域の測量方法・地殻変動・高さ等の違いに起因して地域ごとに変化する成分です。
  •    ここでは、国土地理院が公開している技術資料H1- No.2 測地成果 2000 のための座標変換ソフトウェア
  •    TKY2JGD の数値「TKY2JGD.par」(ただし、国土地理院の値が公表されていない一部の離島については
  •    海上保安庁海洋情報部の数値)を丸めた概略のものを用いています。
  •    正確な数値の使用法については、国土地理院及び海上保安庁海洋情報部のサイトで確認してください。
  • (注3)上記の国土地理院のソフトウェア TKY2JGD は、東北地方太平洋沖地震の発生以前に作られました。
  •    東北地方太平洋沖地震などにより地殻変動が観測された地域では、最新の測量成果に移行させるため、
  •    このソフトウェアによる座標変換に加え「PatchJGDによる座標補正」あるいは「PatchJGD標高版による
  •    標高補正」が必要です。詳細は、国土地理院のサイトで確認してください。


1.9 測量・地殻変動の影響で地域成分が大きい離島地域


  • 〇 以下は、測量・地殻変動の影響で地域成分が特に大きい離島地域の例です。
  • ガイド5
  •  ① 与那国島付近  
  •    ここをクリック   (拡大図が表示されるまでしばらく時間を要します。)
  •  ② 石垣島付近
  •    ここをクリック   (拡大図が表示されるまでしばらく時間を要します。)
  •  ③ 宮古島付近
  •    ここをクリック   (拡大図が表示されるまでしばらく時間を要します。)
  •  ④ 南大東島付近
  •    ここをクリック   (拡大図が表示されるまでしばらく時間を要します。)
  •  ⑤ 青ヶ島付近
  •    ここをクリック   (拡大図が表示されるまでしばらく時間を要します。)